石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

「僕の叔父さん 網野善彦」中沢 新一

網野著作がナカザワを面白くする。 網野喜彦さんの追悼文、ということになっているけど実際には中沢新一さんの考えのほうが強く出ている感じですね。でも、バックボーンとしてマルクス史学や皇国史観に対する反動という個人的な文脈はやっぱり網野さんの中に…

「世界は分けてもわからない」福岡 伸一

文章、うまっ! 科学者の書いたものとは思えない文章力。各章の冒頭に掲げられる引用をみてもずいぶんいろんな本まで読んでいるんだなぁと感心するのだけど(村上春樹まである!)、全体としての構成も見事! 生物学の知識としてはあまり突っ込んだものはな…

「グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する」 佐々木 俊尚

出版から4年近くたってしまって読みました。 賛美から反抗する対象へ。グーグルはもう完全に権力になってしまったなぁと。 グーグルが代表するウェブの現在形の一部を非常にうまく多角的にまとめてある良書だと思います。既存のビジネスモデルを破壊し、知…

「スウェーデンの挑戦」 (岩波新書) 岡沢 憲芙

入門書として、日本と比較して。スウェーデンの福祉国家としての在り方の入門書としてはいいんじゃないでしょうか。政策ひとつひとつの具体例に乏しいし、批判的に読まないと賛美の羅列になってしまいますが・・・。 日本では北朝鮮との関係で社会主義というと…

「民主主義という不思議な仕組み」佐々木 毅

投票権を持つようになって何年も経っているから、わかったような気になっていた「民主主義」を見つめなおすことができました。プリマー新書というカテゴリーだけど十分読み応えのある入門書だと思います。金融危機という形で現れた新自由主義の破綻を考える…

「オバマ・ショック」  越智 道雄 (著), 町山 智浩 (著)

お手軽! アメリカ現代論! タイトルは「売らんかな」だけど、内容は流石の一言。町山さんの本はハズレなしですね。内容で気になったのはアメリカの覇権は黄昏なのか、ということ。政治的に、経済的にアメリカが覇権を失ったら、やはり中国インドアラブあた…

「パレード」  吉田 修一

抜群に面白い。属性を失った人間たちの小さなコミュニティ。踏み込まないことによって傷つけあわず、笑って過ごせるけどお互いの抱えてる問題までは引き受けきれない。登場人物がみんな本当に孤独に感じる・・・。語ろうと思えばいくらでも語れる作品じゃな…

「日本の難点」 宮台 真司

多くのレビュー通り、各テーマの掘り下げは不十分だし、家族の話の自画自賛には疲れるけど、面白い内容だと思います。 世界システム論とか構造論とか記号論とかかじってれば、多少の事前知識があれば・・・、なんとか言わんとするところを類推できる、みたいな…

『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』 中谷 巌

賛否両論さまざま出ているけど、議論が大雑把な分、自分としては一気に読めました。最初から専門書として手に取ったわけじゃないし、面白かったですよ。資本主義とそのグローバリゼーションが持っている深刻な問題は三つあると考えてきたけど、それを再確認…

「海の都の物語 ヴェネツィア共和国の1000年」

「ローマ人の物語」シリーズより、小説的で読みやすいと思う。とにかく圧倒的に面白い。ヴェネツィア人をあまりに功利的すぎるように感じる人もいるかもしれないけど、ヨーロッパの心が中世の魔女狩り的な薄闇の中にいた中で、その理性を維持していたのはす…

「死言状 」 山田 風太郎

江戸川乱歩に影響を受けてミステリー作家としてデビューし、忍法帖で一世風靡、そして完璧に計算された明治もの。ほんとすごい作家さんです。幕末明治ものは掛け値なしに傑作ぞろいだぁ。司馬遼太郎は知ってても山風先生知らないひとって多そう。もったいな…

「テンペスト」  池上 永一

琉球王朝自体が歴史小説、時代小説として取り上げられることが少ない中で、著名な作者が手がけたことはよかったと思う。聞得大君のような表現の難しい存在を物語に溶け込ませたのはえらいなぁと思うし、琉歌を織り込んだのもありだと思う。だけど、どうなん…

「近代日本社会と『沖縄人』―『日本人』になるということ」冨山 一郎

大正から昭和初期の年代について書かれたウチナーンチュの近代化論。ミシェル・フーコーに興味のあるひとなら面白く読めると思います。結局、文化とはその人々の身体にまで刻まれているべきものであり、現代社会を象徴するグローバリズムや効率化の波が身体…

「風花」川上 弘美

文章力、それから想像力 卑近なテーマだし、特別な事件の起こらない小説です。だけど、作者・川上弘美がこれを文章力と想像力だけで書き上げたんだと考えたら、すごいと思う。常人の想像力じゃ書けないディテール。読ませるし、泣かせる。ぼくは作品は読むけ…

「乳と卵」川上 未映子

関西人ならすらすら読めます。関西弁がネイティブなら、問題なく読めるはず。筒井康隆さんの唯野教授思い出すなぁ。町田康より、だんぜん読みやすいし、理性的すぎないでいいんじゃないかな。ところどころで入るエピソードや回想なんかも変にまとめすぎたり…