「テンペスト」 池上 永一
琉球王朝自体が歴史小説、時代小説として取り上げられることが少ない中で、著名な作者が手がけたことはよかったと思う。聞得大君のような表現の難しい存在を物語に溶け込ませたのはえらいなぁと思うし、琉歌を織り込んだのもありだと思う。だけど、どうなんだろう? 感動する要素はなかったなぁ。勢いはすごい。でもディテールが・・・。主人公もあまりにスーパーマン&ウーマン過ぎて感情移入できないし。歴史のルールを守りつつ時代小説として成立させてしまう、という点から考えるとつくづく山田風太郎先生が惜しい。ミステリー小説のように伏線を張り巡らせつつその時代特有の空気(狂気?)にまで感情移入させてしまう力が欲しかった。
沖縄人が「日本人」になる過程にはすごい葛藤があったはず。八重山を清(中国)に割譲する話も歴史的に存在した。主人公より喜舎場朝薫にこそいろんなセリフを吐かせるべきだったのでは?
絵巻物語としては〇だけど、小説としては60点だぁ。
テンペスト 上 若夏の巻 (日本語) 単行本 – 2008/8/28
池上 永一