石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

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  アマゾンオリジナル。ほんとに近い将来実現しそうな、死んだ後に意識をまるごとデジタルの世界にアップロードして、そのデジタル(バーチャル)な世界でほとんど不死のごとく暮らしていける世界を描いたコメディ。
 ユーモアのほとんどがかなりブラックなもので、あの世の沙汰も金次第を地でいく内容になっている(笑)。
 主人公・ネイサンの死にまつわる謎をはらんだミステリー仕立てと、カスタマーサービスの“エンジェル”ノラとのラブストーリーをうまく絡めた作りが、とてもうまくハマっていると思う。テンポも良く、ブラックなユーモアを笑えるし、役者たちの演技も素晴らしいと思う。
 ヒロイン・ノラを演じた アンディ・アローがとにかくキュートで素晴らしい。本来はミュージシャン、シンガーソングライターだそうで、本作までぼくは知らなかったんだけど、目ぢからがあって、笑顔がチャーミングで、知的で、と素晴らしい。
  本編からそれるけど、2点あげておきたい。
ひとつめは、特に現代の日本でこれから起こるであろう、身寄りのいないひとの孤独死の大量発生の問題。僕自身がこのままいくとそうなると思っているのだけど、従来の、残された子孫が墓を見る、という形は近い将来、というかすでに現在進行形で維持できなくなるだろう。江戸時代のなごりから多くの家庭が檀家として特定の寺に所属しているわけだが、そこから墓の管理料として、盆の読経の手間賃としてお寺さんに謝礼を払う。宗教法人として税制面で優遇されていたり、収支報告もいい加減であったりで多くの町の寺はやってきているのだろうけど、引き継ぐ長子がいない、という状況はこれから激増するだろう。このドラマのように死んだ後の仮想世界までお金を払える家庭はまだいいが、現実世界の墓も維持することは困難だ。少子化の社会はいままでの産めよ増やせよの時代から崖を飛び降りるような変化を迫られる。まぁ正直、自分自身は死んだあとのことなんかどうでもいいと思っているけど、社会的な大問題になるだろうなと。
 ふたつめは『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX  2nd GIG』だ。この作品の先見性は士郎正宗を天才たらしめていると思うが、それにしもてサイバー空間に300万人の難民のゴーストを連れて行こうとするクゼの「革命」は、鋭く現代的で、草薙素子がサイバー空間を漂うになるのも先進的だったが、クゼの革命は預言的ですらある。近年、急速に進みつつあるメタバースの構築は、ぼくは形を醜悪に変えたクゼの革命と変わらないと思う。特にアメリカのスーパーリッチに顕著な植民地時代の農園主のような思想は「金持ちとそれ以外=奴隷」ぐらいにしか世界を見ていないように感じる。メタバースが生み出すのは、現実世界で傍若無人に振る舞う富裕層と、仮想空間で調教された庶民という構図じゃないだろうか?
 本作品にブラックユーモアとしてたびたび提示される死後の世界の貧富の差は、生身の生きている世界でも進行中だということだ。
 これから先の20~30年というのは、人間社会にとって、本当に大変な時代になるのじゃないだろうか? 作品自体のユーモア、軽快なテンポ、と登場人物たちの爽やかさにも関わらず、なんだか暗澹たる気分になってしまった。面白いっす!

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