石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

あの夜、マイアミで One Night in Miami 2020年 USA

「2013年に初演された舞台劇『One Night in Miami』を原作としている。
~1964年2月、プロボクサーのカシアス・クレイ(後にモハメド・アリと改名)はヘビー級の世界王者となった。そんなカシアスを祝うために、友人たち(マルコムX、ジム・ブラウン、サム・クック)はマイアミに集まった。4人は純粋に酒を楽しむつもりだったが、話題が公民権運動に及ぶにつれ、「自分たちは差別に苦しむ同胞たちに何ができるのか、また、何をすべきなのか」という問題に向き合っていく。
 本作はアメリカ文化史に大きな足跡を残した4人による架空の対話を通して、今もなお根深く残る黒人差別の問題を描き出す。」
 Wikipediaからコピペ。
 最初に書いておくと、これ、史実じゃなくて、完全なフィクションですので、お間違いなく。
さて、BLMが爆発した2020年に作られたアマゾン・オリジナル作品。先日GoogleYouTubeオリジナルで製作したドキュメンタリーというか特集番組を観たところだったが、アマゾンもBLMにはかなり強くコミットしていることを感じさせてくれる作品だ。

 さて、完全なフィクションなので実際にマイアミで4人が会った事実もないし、時間軸もかなりいい加減に作っているらしい。60年代のアメリカについてはそんなに詳しくないので、メインキャストの一人、ジム・ブラウンのことをぼくは知らなかった。だけどまぁフィクションなので、4人がそれぞれ「社会活動家(政治家)」「ミュージシャン&ビジネスマン」「スポーツスター→ムービースター」「これからのスポーツスター&社会活動家」というような役割分担で対話劇が進んでいくと。この4人が代表する「影響力のある黒人」というのは現代でもそれほど大きくは変わっていないかもしれない。もちろんオバマ大統領を経た今と1964当時を同じように考えることはできないけど、相変わらず黒人たちのポップアイコンはミュージシャンやスポーツスターであり続けている。現代が問題を複雑にしているのは、80年代以降、国や人種にかかわらず、グローバリゼーションが進み、貧富の格差が拡大していることだろう。トランピストたちが叫ぶように「白人の命や生活も大切だ」と。トランプの掲げた「アメリカ・ファースト」のアメリカに黒人たちやマイノリティたちは含まれていたのだろうか?
 本作の冒頭でサム・クックも、ジム・ブラウンもカシアス・クレイも白人とのかかわりの中で差別的な対応や言葉で嫌な思いをするわけだが、特にジム・ブラウンが(おそらくかって彼の先祖が奴隷として奉仕していた)故郷の白人の老人を訪ねるも家の中に入れてもらえないのが衝撃的だ。この白人の孫娘は彼のビッグファンで、この白人老人も「君はこの町のヒーローだ。できることはなんでもやるよ」と言っておきながら、、、。マルコムXは叫ぶ「Our People are dying every day」。2020年でも問題はまったく解決していないらしい。
 
 2020年のBLMは、日本では新型コロナのニュースに覆いつぶされ、アメリカのニュースの中でもトランプがどうしたというニュースに押され、さらにはAntifaというレッテルを貼られて「一部のリベラルが騒いでる暴力的ないかがわしい連中」と見做されてきたように思う。おそらくは中国にたいして攻撃的なスタンスをとるトランプを支持することからQアノンのような陰謀説まで流布する始末で、「トランプ時代=フェイクニュースの時代=ポスト真実の時代」を輸入してしまったように思う。
 YoutubeのBLMに関する特番にせよ、この作品にせよ、僕たち日本人が考えている以上にBLMはビッグマターなんだなと。大坂直美さんがUSオープンで示した態度というのをもう少し深く理解する必要があると思う。なんだかんだいってもアメリカは日本にとって最も重要な同盟国?であり、バイデン大統領が、カマラ・ハリス副大統領が誕生した今、民主党政権を支えるブラックパワーやマイノリティの政治的な意向、Z世代の思いについてもっともっと理解する必要があるはずだ。
 いち映画作品としても十分面白いと思うけど、今だからこそよりいっそう観る価値のある作品だと思う。

 

あの夜、マイアミで

あの夜、マイアミで

  • 発売日: 2021/01/15
  • メディア: Prime Video