石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

2020年amazon作品「THE BOYS」1st,2nd season

 いやぁ面白かった~。かなりの人気シリーズだと思うので、まさか2ndシーズンで(とりあえずの?)大団円を迎えるとは思わなかった。そのいさぎよさがすばらしい! 議会の公聴会脳みそ爆発犯が明かされるラストのオチも最高だったなぁ。アメリカのドラマは面白いものが多いけど、人気があると昔の少年ジャンプみたいにだらだらと続編が続くという(例えばウェストワールドとかオーファンブラックとか)のが残念なところだったので、この作品の2シーズン・全16話というのはお見事。ただ、すごく面白かったので、もっと続いてほしい気持ちもある(笑)

 1stシーズンについてはまさに作品コンセプトの勝利、というべきもので、ヒーローたちがいち私企業のもとである種タレントとして一般社会で活動し、そのあまりの巨大な影響力のために一般人がその活動中に巻き込まれて死亡しても裁判にすらできない、という悪夢のような世界。ネット世論でいうところの上級国民のようでもある。1stシーズンはコンセプト自体が面白いし、スーパーヒーローに対して普通の人間がどうやって戦うかという面白さもあり、どんなエピソードも面白くなる。エログロやスキャンダルを使って戦うあたりはコメディーとして変な自己規制のない、「さすがアメリカのオンライン配信作品!」て感じ。
 2ndシーズンについてはレビュー欄に展開がだるい、的な批判も見られたけど、ラスト8話までみて思うのは、脚本いいじゃん!てこと。2ndに入ってから各キャラクターの背景を説明するようなシーンがいくつも挿入されるのだけど、たしかに1stの流れから行くと冗長に感じられるときもあったのだが、そのキャラクターの書き込みが8話の怒濤の展開に深みを与えてくれているのもの事実。ブッチャーと父親の話なんかは典型的で、最後のブッチャーとライアンの2人のやりとりを表現するには絶対に必要なシーンだったんだろう。クィーン・メイブのパートナーとの関係、ホームランダーの家族愛の欠如などなど、それぞれのキャラクターの行動を規定するものが短いシーンを挿入することできちんと描かれていたわけで、全体の構成としても見事だと思う。

 あと、もちろん忘れてならないのは実際の現代アメリカの政治的・社会的イシューをストーリー展開の面でも、ギャグとしてもふんだんに取り込んでいる点だろう。MeToo運動、BlackLivesMatter、キリスト教原理主義(宗教右派)、LGBT、ガンロビー問題、サイエントロジー、白人至上主義団体・ネオナチ---ていうかストームフロントはガチのナチだが(笑)---などなど。ドラッグ周りでいえばオピオイドの問題なんかも絡めていそうだし、SNSによる世論形成とフェイクニュース、そしてホームランダー=国土安全保障局がデモ隊を暴力的に鎮圧したり、、、。ここら辺の現代アメリカに対する風刺を理解するためには町山智浩さんの解説なんかを見聞きしておいた方がいいはず。
 それにしもて政治的・社会的にデリケートなイシューをエンタテインメントとして表現できるアメリカってやっぱりすごいなぁ。トランプ大統領になってから日本人がイメージするアメリカらしさ、アメリカの良さはどんどん失われつつあるようにも思えるが、2020年にこういう作品を出せるのだから、日本のテレビドラマも見習ってほしいなぁ。

 最後に。タイトルは「THE BOYS」なんだが、最終的に敵の女ボス・ストームフロントをボコボコにするのはGIRLSだし、見事なオチで正体を現す活動家・政治家も女性。CIAの裏ボスも女性だし。主人公のヒューイがあんなだから(笑)、さらに半魚人ディープのダメっぷりが笑えるし、女性陣がみんなかっこよくて、まぁ男ダメなぁという。

 同時代性をもった名作だと思います。オススメ!

 

発端

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