図書館の神様 瀬尾まいこ 2003年 マガジンハウス
食わず嫌いってわけじゃないんだが、読んでなかったんだよね、瀬尾さん。
2021年にこの作品を読んだわけだけど、ほとんど同世代の瀬尾さんが2003年にこういう作品を書いている。自分はいったい何をしてきたんだろう? ずいぶんと時間が経ってしまったなぁ。2003年頃に瀬尾さんぐらいの洞察力と表現力と、優しいまなざしがあれば、いろんなことは違っていたのかな。
平易な文章なのですらすら読める。良くも悪くも人物描写も淡々と書き込まれていて、なのに深く心を揺さぶられる。主人公が大きな心の挫折を経て、最後には「どうでもいい」と思っていた教師という仕事を好きになる。文芸部の垣内くんと弟の拓実がいい味を出してます。
作中に出てくる川端康成、夏目漱石や山本周五郎などの日本の名作小説をもう一度読みたくなったり、未読のものを読みたくなりました。
川端康成「抒情歌」
「死人にものいいかけるとは、なんという悲しい人間の習わしでしょう」
2020年は新型コロナで大変な一年になってしまった。東日本大震災から10年が経った。日本は、社会はなかなかつらい時代にどんどん進んで行っているように感じるけど、社会の問題も確かに大事だけど、人が朗らかに生きるのに必要なことはきっともっと身近なことなんだろうなと。
「神様のいる場所はきっとたくさんある。私を救ってくれるものもちゃんとそこにある。」
いい作品でした。