石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

素晴らしき哉、人生!It's a Wonderful Life 1946年 アメリカ

 言わずと知れた名作中の名作。たぶん子どもの頃に一度は見ているんだろうけど、明確な記憶なし。この年始に改めてみてみた。

 この作品を好きじゃない、という人とは仲良くなれそうな気がしない(笑)。善良で勤勉な主人公・ジョージと良妻賢母・メアリー。雨の中で二人の結婚を祝う歌を歌う友人や、故郷を捨ててNYで成功するジョージの従兄弟。そして、街を牛耳る悪役・ポッター。登場人物たちはどれもステレオタイプではあり、典型的なキリスト教的価値観が通底していると思う。
 だが、それでも名作だ。弟をかばって左耳の聴力を失うシーンと、薬局のバイト中に店主のガウアーさんに叩かれたあと、抱き合うシーン。この二つのエピソードだけでもジョージの善良さを見事に描いている。そして父の死により、世界周遊の夢も大学進学、建築士の夢もあきらめて家業を継ぐシーン。メアリーとの結婚式と、その後の取り付け騒ぎ。ジョージは一貫して弱い人たちの味方をして、自らのハネムーン資金すら出してしまう。それを全く厭わないメアリー。シンプルなシーンの連続だけど、観客も街の隣人たち同様、どんどんジョージが好きになってしまう。
 そして迎えるクリスマスイブ。大戦でパイロットとして英雄になった弟を迎えるべく機嫌良く朝を迎えたのだが、叔父ビリーが会社の資金を紛失。
 ジョージは酒を浴びるようにのみ、保険金を手に入れるべく、自殺を考える。この後の天使クラレンスによって体験させられる「もし、自分がいなかったら」の世界がこの作品の白眉だろう。
「一人の命は大勢の人生に影響し、一人が欠けると世界は一変する」自分はジョージほど善良ではなくて善行と呼べるほどのことをしてきたかはわからないし、ジョージほど志をもって仕事に取り組んできたかはわからない。だけど、そんな矮小な自分であっても、この世界を織りなす一部分なわけだし、この与えられた生命を、人生を、支えてくれる周りの全ての人たちへの感謝とともにしっかりと生きなきゃなと。
 改めて観て、本当に名作です。
 蛇足だけど、この作品、公開当初は興収的に失敗だったらしい。なぜ当時、ヒットしなかったのか、謎だ。戦後すぐの1946年にはこういう作品は求められていなかったのだろうか? 理由を知っている人、教えてください。