石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

フランクおじさん Uncle Frank 2020 アメリカ

 これは良作。自然豊かな情景を切り取った映像、抑えられているけど豊かな俳優陣の演技、主人公・ベスとアンクルおじさんの間に通い合う優しさ。とても素敵な作品だと思う。
 冒頭のシーンが好きだ。ベスとアンクルおじが二人で話すシーン。田舎の、粗野な家族になじめないベスが唯一心を許せる相手がNYに住む大学教授・アンクルおじさん。このシーンとラストシーンが見事なつながりをみせていて、美しい南部の田舎をそよ風が流れ、みんなの顔から笑顔がこぼれる。ベスの独白、ナレーション部分がとても詩的で、素晴らしい。
 ベスを演じたソフィア・リリスもとてもかわいい。
 ストーリーについては割愛するが、作中で最も魅力的な登場人物はアンクルおじさんのパートナー・ウォーリーだろう。演じたPETER MACDISSI自身、どうやら本当にゲイのようで、ユーモラスな演技で作品の猿回し役だと思うが、アンクルへの深い愛と、ベスに向ける優しい眼差しが素晴らしい。

 ゲイとして生きることは現代でもまだまだ大変だろうなと思う。ましてや、1970年代、保守的なキリスト教社会のアメリカ南部ではさらにつらそうだ。キリスト教を初めとする一神教は、なかなか多様性とかみ合わない部分があるよなぁ。日本においては衆道の文化が連綿とあったわけだが、明治以降の西洋化のなかで厳しく規制されるようになっていったらしい。今でも日本の田舎でゲイであること、はけっこうつらいだろうと思う。家族や親族の理解を得るのは容易ではないし、パートナーを探すのも大変だと思う。ほんと日本の田舎もめちゃくちゃ保守的だからなぁ。

 作中、母親がアンクルにかける言葉が素晴らしい。
「You are my precious gift from God. And nothing ever will change that」
 母の愛は偉大だ。ラストシーン、アンクルだけじゃなく、ベスにとっても故郷を取り戻すことになる。心暖まる素晴らしいラストだと思う。

 

フランクおじさん

フランクおじさん

  • ポール・ベタニー
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