石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

2008年作品「西幹道」(邦題「1978年、冬」)

 中国内陸部・山西省の田舎町が舞台。まず、中国のこの手の作品で実感するのは、大陸の茫漠とした景色と、人間の小ささだ。1978年の冬(とその翌年の冬)が描かれているのだけれど、厳しい寒さと、陰鬱な曇り空が象徴的で、文化大革命が終わって間もない当時の中国の閉鎖的で単調な庶民の日々が淡々と映し出される。
 そこに北京から美しい少女がやってきて、、、。
 見終わった後に「What's Eating Gilbert Grape」ギルバート・グレイプを思い出してしまった。ジョニー・デップレオナルド・ディカプリオジュリエット・ルイスがみんな素晴らしい演技を見せてくれる名作だ。この作品の主人公ギルバート・グレイプアメリカのアイオワ州の田舎町を一度も出たことがなく、、、。
 似てるけど、ジュリエット・ルイスは自由でチャーミングなアメリカ人だったが、こちらの作品のヒロインは暗い、、、。ていうか弟の方头(ファントウ)が笑いをもたらしてくれる以外、みんな暗い。

 この作品の舞台1978年以降、中国は改革開放に舵を切り、経済的な発展へ猛進していくわけだけど、現代の中国の農村にもいまだ貧困は存在し、格差の大きさのため当時とは別の問題を多く抱えているように見える。
 とはいえ、当時の状況から高度経済成長を謳歌し、自分たちの生活が豊かになっていくのを感じてきた中国の人たちがなんだかんだいいながら中国共産党を支持してしまうのはムリもないかなぁと思う。以前がひどすぎたからね。言論の自由はないし、デジタルな監視社会だけど、当時と比べれば自由な生活だろうしね。

 作品中、ヒロインと主人公兄弟の母親以外は素人を起用しているそうだ。台詞が極端に少ない作品だからなせる業ではあるけれど、みんなの振る舞いや話し方は本当にリアル。もちろん、実際の当時の現地の人たちはもっと方言やなまりが強くて聞き取れないだろうけど。
 2007年の東京国際映画祭で作品賞と主演女優賞を獲得しているらしい。
ちなみにその主演女優賞を獲得した沈佳妮は、この作品の撮影期間に監督からセクハラを受けたという告発をメディアで行っている。真実はよくわからない。監督と編劇は夫婦で、「ともに現場にずっといたからあり得ない」と主張している。
 このトラブルのせいか、中国国内での評判はそれほどよくなかったようだ。あるいは現代の中国人だって暗い過去はあまり振り返りたくないせいなのかもしれない。
 

 

1978年、冬。

1978年、冬。

  • 発売日: 2020/08/14
  • メディア: Prime Video