「500ページの夢の束(字幕版)」Please Stand By
これはスタートレック・ファンにとってはずるいぞ、この映画っていう。
自閉症の彼女をダコタ・ファニングが演じるある種のロードムービーなんだけど、ダコタが異常にスタートレックに執着しており、その脚本公募に応募しようとするところから物語が始まる。スタートレック式の挨拶からオタク的なクイズ問答、愛犬がスタートレック式の服を着ていたり、、、(笑)。笑えるだけじゃなくて愛を感じちゃうよなぁ。LAについてから警察官に追われ、その警察官がクリンゴン語で話しかけるシーン。スタートレックファンにとっては涙なしには観られないよ。施設のカウンセラーの息子が車中でスタートレックについて母親に解説するシーン。バルカン人は感情の処理に悩み、、云々のくだり。カークとスポックの友情を知るファンにとっては、その命がけの友情を知るファンにとっては、涙涙涙。自閉症の彼女が感情の処理がうまくできず、他者とのコミュニケーションがうまくできない、というのをスタートレックを物語に持ち込むことで巧妙に描いてみせる。
ファンなら知っている。ジーン・ロッデンベリーが生み出したスタートレックが(当時としては特に)如何にダイバーシティを重んじていたか。どれほど他者に対する理解の大切さを説いていたか。ロッデンベリー本人は無宗教だったらしいけど、どんな宗教よりも他者への愛を大切にしていたか。
バルカン、クリンゴン、ロミュラン、ボーグ、そしてAI。敵として戦うこともあるけれど、いつも相手を理解し、尊重することを忘れない、そしていずれは互いを支え合う友となる。
この作品では主人公のダコタも、LAへの旅を通してほんの少しだけど、成長していく。自分がやりたかったことをやりとげ、支えてくれた人たちに、特に姉への感謝を告げる。本当に小さな前進だけど、それは偉業でもある。
天才子役だったダコタが21歳の自閉症の女性を演じている。複雑な設定の主人公を見事に演じていると思う。
個人的には、スタートレックは現代アメリカが生み題した最良のヘリテージのひとつだと思っている。いつまでも、スタートレック本来の精神を大切にする人たちの手によって作られ続けてほしい。あ、本編関係ないか。