「判決、ふたつの希望(字幕版)The Insult 」
原題はアラビア語なのでよくわからんが、英語タイトルは「The Insult」。邦題の付け方は昔から賛否両論あるけど、この作品「判決」というのもどんなかなぁ。Insultは直訳で「侮辱、無礼、侮辱行為」。
判決と侮辱では違いすぎるよな。実際、本作品は裁判劇の形をとってはいるけれど、判決自体はそれほど重要ではないと思う。パレスチナ難民の現場監督ヤーセルが投げつけた「クソ野郎」とキリスト教徒のレバノン人トニーが投げつけた「シャロンに殺されれば良かったのに」というふたつの侮辱を巡る物語だ。
鑑賞後、監督の短いインタビューも見たけれど、判決についてはそれほど重要視していなかった。
レバノンの国情とパレスチナ難民の関係をある程度知っていないと、少しわかりづらいかもしれない。判官贔屓の日本人としては物語の始まりからどうしてもヤーセルに肩入れしてしまうし、トニーが美人の奥さんがいて、やがて子どもも生まれそうという幸福な状態を見たら、より一層ヤーセルが可哀想になってしまう(笑)
(ネタバレ含みます)
レバノンの特徴としては中東の中では際立ってキリスト教徒が多いことだろう。全体としてはイスラム教徒の方が多いのだけど、シーア派とスンニ派が対立しているためにキリスト教徒が主流派になってしまうという日本人にはわかりづらい構図だ。そのため、大統領もキリスト教徒が選ばれている。微妙なバランスの上に成り立っている国なのだ。
トニーの少年時代の虐殺の事実が明らかになってから、レバノンの抱える闇の深さに気づく。第二次大戦後「中東のパリ」とまで呼ばれるほど繁栄したにもかかわらず、度重なる中東戦争から生まれた多数のパレスチナ難民が流入したことにより、内戦状態に陥ってしまう。ディアスポラを経験してきたユダヤ人がイスラエルを作ってパレスチナ難民を生み出してしまうのだから、本当に人間というのは、、、。
中東地域というのは正直言ってなかなか旅行で行くにもハードル高いし、日本人が理解するのは難しい部分が多々あるけど、こういう映画を通して少しでも理解できたらなと思いました。いい映画です。