石垣島から所想所説、徒然なるままに

沖縄・石垣島の話題を中心に、石垣島から見えること、思うことを徒然に。好きな映画のレビューや、自分が難儀しているアトピーの話題なんかも。

わたしは、ダニエル・ブレイク I, Daniel Blake by Ken Loach (字幕版)ケン・ローチ

 ただの左翼のプロパガンダ映画じゃない。社会の包摂力を問う良作。
 まず、イギリスを昔の教科書に載っていた「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家のイメージで語っているレビューが散見されるけど、サッチャー以降の新自由主義のイギリスをぜんぜん理解していないと思います。福祉国家の時代はイギリス病と評されるほど行き過ぎていた部分もあったのかもしれないけど、その後の弱者切り捨ては明らかに行き過ぎていて、さらにグローバリズムの影響でますます事態は複雑化し、深刻化しているようです。
 ケン・ローチ監督ということもあり、単純な左翼的な福祉切り捨て批判ととる観方もあるようだけど、むしろダンとケイティ一家、お隣さんのチャイナなどとの助け合いにこそ社会の包摂という大事なテーマが含まれていると思います。後半は涙なしには観られませんでした。ケイティのフードバンクでのシーンは実話のエピソードを基にしているそうです。これが先進国!?
 日本も正社員と派遣社員の階層化や、貧困の世代間連鎖、そして破綻寸前の年金制度と医療保険など、ここに描かれていることは今すでに現実化しています。病気や結婚の失敗、あるいは事故など、明日ぼくもあなたも“弱者”になるかもしれない。そしていずれはみな“老人”という身体的弱者になる。その当たり前の事実を現代の社会はあまりにも軽視しているように思いました。
 名作です。軽い気持ちで見るのはやめた方がいいかもしれません。

 

わたしは、ダニエル・ブレイク (字幕版)

わたしは、ダニエル・ブレイク (字幕版)

  • 発売日: 2017/09/06
  • メディア: Prime Video