「悪人」 吉田 修一
素朴であること、ひとに真面目であること、悪人。
なぜ吉田修一さんは「いま」を生きる人たちの心をこんなにもうまく描けるのだろう? この高度情報化社会の中じゃいろんな「意見」やら欲望すべき「情報」やらが垂れ流されているけど、そんなものに興味も関心も持てないのは「悪い」ことなんだろうか? 馬込光代が登場してから主人公=悪人は自分が大切にしたいモノコトに(やっと?)気付く。
主人公・清水祐一がそんなにたくさんのことを望んだわけじゃないと思う。ひとがひととして尊重され、きちんと向き合いあえる関係を望んだだけだと思う。その素朴な気持ちが裏切られたときに「悪」が生まれてしまう。
傑作「パレード」に次ぐ作品だと思います。
舞台が著者の出身地である九州であり、方言もきちんと織り込まれているのもとても重要なことだと思います。
おすすめです。
悪人(上) (朝日文庫) (日本語) 文庫 – 2009/11/6
吉田 修一 (著)